人々のしあわせを願った真言宗の開祖-弘法大師 空海とは?

・人物・作家

エリート官僚をめざしていた地方豪族の子だった

 幼い頃から優秀だった空海は、両親からエリート官僚になることを期待され、都に1つしかない大学をめざす。大学に入れるのは、ほとんどが貴族で、地方豪族には狭き門だった。その難関を空海は突破し大学に入り勉学に励む。
 しかし、官僚社会では、どんなに成績が優秀でも、地方豪族は貴族よりも上に上がれないことを知る。 そして、やる気を失ってしまった空海。
 そんな中、共に大学で学ぶ朝廷の貴族たちは、庶民を支配すべき対象としか見ておらず、庶民は、重税に苦しみ貧しい暮らしをしている。官僚になって何になるのだろうかと、若き日の空海は、誰も救われない思いに悩み、大学を中退し出家を決意。山岳修行を始める。あらゆる宗派の経典を読み漁るようになる。その間に、中国語も学んだといわれる。
 そんなある日に出会った経典の中に大日経典の一部があり、理解が出来なかったが、それこそが自分の捜し求めるものと感じた。日本には密教を分るものは居なかった。 それは経典の一部を読んだだけでは理解しきれず、師が必要だと、どうしても唐に渡らなければならないと、唐を目指すことを決心する。
 当時、唐に渡るためには、遣唐使になるしかなかった。

当時、日本に広まっていた仏教は、”死後の世界の幸せ”の極楽をさとす宗教でした。密教は、”死後よりも現世に重きを置く”生きながらにして仏になれる宗教で、そこに大きな違いがあります。

空海が日本の歴史に初めて登場したのは平安時代初期(804年)

 空海が日本の歴史に初めて登場したのは平安時代初期(804年)、空海が31歳のとき。第16次遣唐使、 滞在期間20年間が義務の長期留学生として 、唐へ渡った記録。
 この航海は、途中豪雨にあい九死に一生を得て、予定の港と違う港に到着。しかし、嵐で国書を失ってしまったため、遣唐使という証明ができなかった。海賊か密入国者と間違われ捕まりそうになったが、州庁の長官は空海の中国語の力や文章の力に驚き、「ここまでの書は、正式な使者であろう」と、遣唐使と認められたといいます。

語学の天才だった空海

 他の一行が、言葉が不自由な中、空海だけは、中国語を自在に操り長安の街を事由に歩き回ったという。世界の大都市として、シルクロード経由の珍しい品々もたくさんあった。
 そんな土地で、 優れたインド人学僧から、大日経の言葉『サンスクリット語』も『 天竺の思想 』を学び、わずか3ヶ月で習得しました。彼は、自分で翻訳した経典や、集めたものを日本に持ち帰るように、空海に贈りました。
 そして、3人の皇帝を弟子にした”三朝の国師”といわれる第七祖・青龍寺の恵果(けいか)和尚のことを教えてくれたので、訪ねに行くことに。

密教の第七祖・青龍寺の恵果和尚と会う

 恵果(けいか)和尚は、空海に会うとこう言ったという。
「私はあなたが来るのを以前から待っていました。私の寿命がきているのに法を授ける者がおりません。あなたに密教のすべてを授けましょう。急いで準備なさい。」
 1000人もの弟子の居る恵果は、継承者を選べずに居た。空海は、待ち望んでいた人物だった。恵果は、一対一の口伝で、空海に密教の伝授をしてゆく。
 わずか3ヶ月で、心から心に全てを授けられていったという。

 密教の継承する儀式の中の『投華得仏(とうけとぶつ)』という儀式で、不思議なことが起きた言い伝えがある。 空海の投げた式木は、胎蔵界曼荼羅・金剛界曼荼羅の両方で、密教の中心たる仏「大日如来」の上に落ちたという。
 すべての儀式を終え、すべての法を授け終わった恵果和尚は空海に言った。
「一刻も早く祖国に帰り、この教えを国中に広め、人々の幸せが増すようにいのりなさい。そうすれば、世の中は平和となり全ての人々が心安らかに暮らせるでしょう。」
 その3ヵ月後恵果は生涯を終え、空海は、第八祖を継ぐ。

『投華得仏(とうけとぶつ)』 とは、密教においては、頭頂に水を灌いで諸仏や曼荼羅と縁を結び、”有縁の仏”を知るための儀式。正しくは種々の戒律や資格を授けて正統な継承者とするための儀式のことです。

留学期間20年滞在予定を2年で切り上げ帰国する

 そして、日本に密教を早く広めるため、自分も恵果と同じく ”三朝の国師” となろうと決心する。はやく帰国をしなければ。と考える。
 20年分の滞在費用を全てを投じて、経典、法具、曼荼羅・・・日本にないものだけを選び、全てを揃えた。そして、わずか1年で、唐の土木技術や薬学も学び身につける。

 唐に渡って2年後、遣唐使船に乗り、帰国する。このときに帰国できなければ、次の遣唐使船は30年後だったという。

 もしも、空海の帰国が30年後にまで延びてしまっていたら、日本の仏教はいまとはだいぶ違っていたでしょうね!

選ばれた運命なのでしょうか?
奇跡や偶然?も重なる空海の生涯なのです。

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